Ionicの上で実行モデルは固定される──Angular・React・Vueが「後戻りできない構造」を作る瞬間

1. Ionicとは「UIコンポーネント層」に過ぎない
Ionicとは、モバイル向けUIをWeb技術で表現するためのコンポーネント群です。
- Ionic Components = Web Components
- 描画処理はWebViewのDOM/CSSエンジン
- Ionic自身は状態もロジックも持たない
つまり、IonicはUIの形だけを定義する層であり、アプリの振る舞いを決定する力は一切ありません。
この「空白」をどう埋めるかが、Angular / React / Vue の役割になります。
2. Ionicアプリの実行単位をレイヤーで分解する
Ionicアプリの内部は、次のレイヤーで動いています。
重要なのは、Ionicはロジック層に一切介入しないという点です。
3. 画面ライフサイクルと状態寿命のズレ
Ionicには独自の画面ライフサイクルがあります。
- 画面はキャッシュされる
- 非表示でもDOMが破棄されない場合がある
- 戻る操作で状態が復元される
一方で、Angular / React / Vue にはそれぞれ別のライフサイクルがあります。
ここで次の問題が生まれます。
- 画面は存在するが、状態は破棄されている
- 状態は残っているが、画面は再生成される
このズレをどこで吸収するかが、フレームワークごとに固定されます。
4. Ionic + Angular:状態がServiceに固定される理由
Angularでは、状態はServiceに集約されるのが一般的です。
- Serviceはアプリ全体で共有
- Componentは表示責務
- DIにより参照関係が固定
Ionic上では、これが次の構造を生みます。
- 画面が破棄されてもServiceは生き続ける
- 状態の初期化タイミングが不明確になる
- 非同期処理が画面外で継続する
結果として、「画面に紐づかない状態」が増殖します。
これはAngularの設計思想がIonicの画面管理と噛み合わないために起きる必然です。
5. Ionic + React:再レンダリング境界が設計になる瞬間
Reactでは、状態変更=再レンダリングです。
Ionic ComponentsはDOM構造が深く、Reactの差分計算は以下の影響を受けます。
- 状態をどこに置くか
- どのコンポーネントでuseState/useContextを使うか
- 再レンダリング範囲をどこで切るか
結果として、
- パフォーマンス対策のために状態を分割
- UI構造が状態境界に引きずられる
- Hooksの構成が設計そのものになる
Ionic + Reactでは、再レンダリング境界=アプリ設計になります。
6. Ionic + Vue:リアクティブ依存が構造を曖昧にする
Vueはリアクティブシステムが非常に強力です。
- 状態変更が即DOMに反映
- テンプレートと状態の距離が近い
Ionicと組み合わせると、
- Ionic Component内で直接状態操作
- computed / watchが増える
- 状態の所有者が不明確になる
結果として、UIが状態を内包する構造ができあがります。
後から状態管理を分離しようとしても、影響範囲が広すぎて切り出せません。
7. 同一UIでも内部構造が分岐する具体例
同じ「一覧 → 詳細」画面でも、
- Angular:Serviceが一覧・詳細の状態を保持
- React:画面コンポーネントが状態を分割管理
- Vue:テンプレートと状態が密結合
UIは同じでも、状態の流れは完全に別物になります。
8. 技術者が本当に見るべき選択軸
選択基準は人気や学習コストではありません。
この問いに答えた時点で、選択肢はほぼ一つに絞られます。
Ionicとは、UIを提供するだけで、実行モデルを一切決めないフレームワークです。その空白をAngular・React・Vueがそれぞれ異なる方法で埋めることで、状態寿命、再描画境界、非同期処理の構造が固定されます。どれを選ぶかは好みではなく、どの設計制約を受け入れるかという判断です。Ionicを使う以上、フレームワーク選択はアーキテクチャ選択そのものになります。
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