AR体験の質を決めるのはレイテンシだ――スマホとARグラスで異なる設計前提を整理する

1. AR体験におけるレイテンシはどこで発生するのか
AR体験のレイテンシは、単一の処理遅延ではありません。実際には、次の処理が連続して発生しています。
- センサー入力(カメラ、IMU)
- 空間認識・トラッキング処理
- 座標変換・オブジェクト配置
- 描画処理・表示更新
このどこか一箇所でも詰まると、体験全体に影響が出ます。特にAR体験では、処理が連鎖しているため、遅延が増幅されやすいという特徴があります。
2. レイテンシは「平均値」ではなく「瞬間値」が問題になる
一般的なアプリでは、平均的なレスポンスが重視されます。しかし、AR体験では考え方が異なります。
- 普段は滑らかに動いている
- しかし特定の瞬間だけカクつく
この一瞬の遅延で、ユーザーは「ズレた」と認識します。特に頭部や端末の動きと連動するAR体験では、瞬間的な破綻の方がUXへの影響が大きいのが特徴です。
そのため、AR体験のレイテンシ設計では次の判断が重要になります。
- 処理を止めるか、精度を落とすか
- 表示を維持するか、一度消すか
- 再認識を明示するか、裏で行うか
3. ARスマホにおけるレイテンシ設計の現実

ARスマホでは、カメラ入力と表示が同一デバイス内で完結します。そのため、一見すると制御しやすいように見えますが、実際には制約も多く存在します。
スマホARの前提条件
- バッテリー消費がUXに直結する
- 熱制御による性能低下が起きやすい
- 他アプリやOS処理の影響を受ける
このため、実装現場では次のような設計判断が行われます。
- フレームレートを優先し、描画品質を下げる
- トラッキング精度が落ちたら即座に表示を簡略化
- 一定条件でARオブジェクトを固定または非表示にする
スマートフォンARでは、「正確なAR体験」よりも「破綻しないAR体験」を作ることが現実的な目標になります。
4. ARグラスにおけるレイテンシ設計の難しさ

ARグラスでは、レイテンシの影響がさらに深刻になります。理由は単純で、視線と表示が直接結びついているからです。
ARグラス特有の制約
- 頭の動きと表示が常に同期する必要がある
- わずかな遅延でも酔いや疲労につながる
- デバイス重量・発熱・消費電力の制約が厳しい
そのため、ARグラスでは次のような設計思想が採られます。
- 高精度な更新を頻繁に行わない
- 表示の更新を段階的に制御する
- 空間内のオブジェクト数を意図的に制限する
ARグラスにおいては、「常に正しい位置にある」ことよりも、「常に同じ挙動をする」ことの方が、体験の安定性に寄与します。
5. ARスマホとARグラスの設計思想の違い
同じAR体験でも、デバイスが変わるだけで「正しい設計」はまったく異なります。
6. レイテンシ設計は「UX設計」ではなく「失敗設計」
AR体験の設計で重要なのは、理想的な状態をどう作るかではありません。
- トラッキングが外れたとき
- センサー情報が信用できなくなったとき
- 処理が追いつかなくなったとき
この「失敗状態」にどう振る舞うかが、AR体験の品質を決めます。
5年後であっても、これらの失敗が完全になくなることはありません。
AR体験の進化において、レイテンシ設計は今後も中心的な課題であり続けます。ARスマホとARグラスでは、遅延に対する許容度も、設計の優先順位も大きく異なります。重要なのは、理想的な体験を追い求めることではなく、制約を前提に破綻しにくい設計を行うことです。AR体験の未来は、派手な表現ではなく、こうした地味な技術判断の積み重ねによって形作られていきます。
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